人生の続きを聖女として始めます
「……一体何を言ってるんだ?」

私の眼前まで来たエスコルピオは、一言そういった。

「何って……………」

駄々漏れだった殺気は、ここに来て完全に鳴りを潜めた。
少し感じた戸惑いも今は感じられない。
エスコルピオは、その手に持った何かを私の腰に押し当て、もの凄い勢いで180度ひっくり返した。

「やはり………採寸が甘い……」

「…………は?」

私の腰には、メジャーがぐるんと巻き付き、その目盛りを見ながら、鉄仮面が怒ったように呟いた。

「エスコルピオ?何これ?」

「このようなガバガバでみっともない衣装をよくも着れたものだな。こんな格好で殿下のお側にいるのは許されない」

「………ごめん。何言ってるんだかさっぱりわからない」

私は小首を傾げた。
さっきの恐怖はどこへやら。
今は、不可解なエスコルピオの行動に疑問符が乱れとんでいる。

「………みっともないから直してやると言っているんだ!脱げ!!」

「……………………今?ここで?」

「いっ!?」

鉄仮面が面白いくらい動揺したので、私はさっきの借りを返すべく大きな声で叫んでみた。

「いま!?ここで!?」

「待て、一応外に出ている……脱いだら呼べ」

一生懸命取り繕うと、エスコルピオは足早に部屋を後にした。

…………わけがわからない。
向けられた殺気は間違いだった?
そんなはずはないと思うけど。
もし本気だったとしたら、どうして直前で止めたのか。
そしてなぜ……裁縫が出来るのか!?
暫く考えてみたけど答えは出ず、待たせるのもいけないと思い大急ぎで着替え始めた。
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