人生の続きを聖女として始めます
「エスコルピオ!?」

いきなり走り出した彼を追いかけて、扉を出ると、レーヴェの部屋から絶叫が聞こえてきた。

「やだ!やだやだやだやだーー!!くるなぁーー!うわぁーーーーー」

「レーヴェ!?」

何かあったの!?
急いで隣の部屋に飛び込むと、レーヴェの寝台の上でエスコルピオが屈み込む姿が見えた。

「一体どうしたの!?」

駆け寄ってみると、エスコルピオはレーヴェを抱き締め、必死で何かを囁き宥めている。

「殿下……レーヴェ様!大丈夫です!ただの夢でございます!」

「夢?……もしかして、悪夢を見るの?」

私の問いかけに、エスコルピオは何も言わず頷いた。

「夜になると、良く悪夢を見て叫ぶんだ……始まると暫くは収まらない……一晩中のこともある」

悪夢って、子爵邸の出来事?
現代で私も見ていたあの生々しく、辛く悲しい夢のこと?
でもあれは、マデリンの記憶で幼いレーヴェは覚えてもいないはず。
……いや……幼くても……逆に幼い方が感性は鋭いかもしれない。
あの夜、レーヴェの夜泣きはいつもより酷かった。
もしそれを体感で覚えているのなら、今も悩まされることがあるのかもしれない。

「エスコルピオ……私に代わって……」

泣き叫ぶレーヴェに手を伸ばしたが、エスコルピオは拒絶し首を振った。
お前には無理だ……そう言いたいんだろうけど、悪夢を見る辛さはきっと私にしかわからない。
困っているようなエスコルピオを押し退け、身を固くしたレーヴェの側に座り優しく抱き締めた。
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