人生の続きを聖女として始めます
「大丈夫。大丈夫……」

そう繰り返して背中を擦り、少し緊張が解けた所でポンポンとリズムを刻む。
そして、私は子守唄を歌った。

「……夕ぐれに……親子のつぐみは……身を寄せて……仄かに灯る明かりへと……羽ばたきながら帰りゆく……」

この子守唄は、ピアノ好きだった亡き母、サマンサの作曲した子守唄だった。
出産時の大量出血の為、私を産んですぐこの世を去った母は、妊娠中にこの子守唄をよく歌っていたらしい。
お腹の中でしか聞いたことのないメロディーを、私は父やデュマに教えられた。
やがて、私自身が母になり、この子守唄は、夜泣きをするレーヴェの為のものになった。
あの頃、この子守唄を聞くと彼は泣き止んでいたけど、今はどうだろう。
覚えてくれているかな?
少し不安になりながら、私は続きを口ずさんだ。

「愛しき子らを……穏やかな……月の光が満ちる夜に……」

背中で一定のリズムを取り、囁くように歌い続ける。
すると、レーヴェの息がだんだんと健やかになってきた。

「……ん……お母様……」

レーヴェの閉じられた瞼から一筋、涙が溢れた。
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