人生の続きを聖女として始めます
「いっ、いいえ!違います!優しく綺麗なだけじゃなくて、武芸も得意だなんて素敵だなって……」

キラキラとした瞳のレーヴェの後ろで何故かエスコルピオも頷いている。
優しく……綺麗……?
言われたことのない言葉に、私の顔は火を吹きそうに真っ赤になった。
まさか、我が子の言葉に赤面する日が来ようとは。
それにしても、まだ5歳なのにこんな言葉がスラスラ出てくるなんて、これ将来とんだチャラ王になったりしない?
おかーさん、心配よ?

「あ、ありがと。そうだ!レーヴェは?勉強の他に何かしてる?剣とかの稽古してるのかな?」

顔の火照りを冷ますべく、今度はレーヴェに話をふった。
王族ならそういうこと必修でするわよね?
想像でしかないけど。

「いえ……剣は、父上様がやらなくてよいと……」

「ん?どうして?自分の身を守る為には必要でしょ?」

「……強くなっても何の役にも立たない、って……」

レーヴェは悲しそうに俯いた。
そんな彼の側にエスコルピオが跪き、覗き込んで言った。

「殿下。獅子王陛下にはお考えがおありなのですよ。この先、殿下が剣など持たなくてもいい世界をつくる為に頑張っておいでなのです」

そう言ったエスコルピオの声に、どこか不安そうな響きが混じっていたのを感じた。
信じているけど、それが正しいのかわからない。
そんな風に聞こえた。

「エスコルピオ。僕もそんな世界が来ればいいと思うよ……でもそれで鍛練をしなくていいというのは別だと思うんだ……」
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