人生の続きを聖女として始めます
「北館に住む陛下の妃、ビクトリアが常々殿下の命を狙っているのですよ」

「なっ!!」

そういえば、エルナダに来た時にリブラが言ってたっけ?
妃が一人いるって。
その女が私のレーヴェを殺そうと!?

「ちょっと待って下さい。それを獅子王は知ってて放置を??」

「知っています。だから、エスコルピオを側につけたのです」

「はぁ!?知ってるなら、ビクなんとかっていう妃をどうにかしたらいいのでは!?証拠がないわけじゃないんでしょ?」

王子を殺そうとするなんて、極刑じゃない!
いや、私が極刑にしてやる!

「ビクトリアです……確かに正論です。証拠もあるにはあります。しかし、陛下のお考えでこの件は不問になっています」

不問!?
開いた口が塞がらない、とはこの事だわ!
エスコルピオが優秀な護衛であることはわかるけど、レーヴェの命を狙う者を罪にも問わず、それどころか同じ王宮に置くなんて普通じゃない。
そのビクトリアとやらに惚れてて罰せないとか?
そんな色ボケした王なんて願い下げだけど。
少なくとも、親ならこんなこと絶対にゆるさな………そうか、そういうことか。
「親じゃない」からだ……。
もしかしたら、レグルスが今の獅子王かもと考えたこともあった。
そうであればいいとも思った。
だけど、一縷の望みだった、ルリオン=レグルス説は、この時私の中で儚く消え去った。

ルリオン陛下にしてみれば、レーヴェは自分の子供じゃなくてただの甥っ子。
本当の子供ではないから、危険を知ってても対処しないのは頷ける。
いや、ひょっとして死んでもいいくらいに思ってるかもしれない……。
そう考えると、私の中に沸々と怒りが沸き上がり、それは見事に顔に出た。
その表情を見たガブリエラは、慌てて私を宥めた。
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