人生の続きを聖女として始めます
「初めて会ってから、ずっと、君の笑顔に癒され続けた。君がいたから、オレは自分が生きていてもいいんだと思うことが出来た。今ではマデリンがオレの生きる希望だよ」

「レ、レグルス様!!ですが、あなた様は……」

「しっ。そこから先は言うな。それは、オレには関係のないことだ。ここで生き、ここで死ぬ。でも、それは幸せなことだよ。君がいてくれるなら」

彼の表情は全く見えない。
何を考え何を思っているのか。
表情から読み取れない私は、かろうじて伝わる鼓動からそれを読み取った。
どちらのものかわからない鼓動は、速く強い。
このままでは爆発するんじゃないかというほど危険で……。

「……私がレグルス様のお役に立てるなら……それは、大変光栄なことで……」

恐る恐る言葉を紡ぎ出す。
一欠片の冷静さが、私の本心を頑張って押さえ込んでいる。

「違う!そんな言葉が聞きたいんじゃない!わかっているはずだ!」

怒ったような声を出し、彼は抱き締める腕の力を強めた。
わかっている。わかっているから、それを本当に言ってよいのかまよっているのです。
私はなんとか顔だけ動かして、レグルス様を見上げた。

「……望んではダメか?ただひとつ、欲しいと思ったものを……」

見上げた彼は、泣いていた。
その瞬間、一欠片の冷静さなど、どこかに吹き飛んだ。
どうしようもなく愛しくて、世界中の全てのものからレグルス様を護りたい、そんな気持ちが波のように押し寄せる。

「レグルス様……愛しています。私などが、おこがましいとは承知して……」

「余計な言葉はいらない」

静かに言った言葉には、切ない思いが籠っていた。

「……あ、愛しています!レグルス様!」

「うん、オレも……マデリン。愛してるよ」

レグルス様の手が、私の頬を捉えた。
長い指を探るように滑べらせ、唇を撫でる。
その優しい動きに擽ったくなり俯きかけた私の顔を、彼はそっと支え……そして口付けた。

その日、私は密やかにレグルス様と一夜をともにし、次の日には、父と執事の立ち会いのもと、簡単な結婚式をした。
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