人生の続きを聖女として始めます
「ふん、考えすぎだ……」

「そうでしょうか?……ま、良いでしょう。今夜にでも聖女様とお引き合わせしたいのですが、よろしいですね?」

うまくかわしたつもりだが、ガブリエラは不審そうな目をしたまま、オレに尋ねた。
尋ねたというか、これはもう決定らしい。
その強い語気には、断ることは許さないという確固たる意志が見えた。

「仕方ないな。では、ビクトリアも呼ぶがいい」

「は!?なぜあの女を!?」

「今いる唯一の妃だろう?新しい妃同士仲良くやればよい」

「獅子王の妃は聖女様お一人ですが?一体何をお考えか?そんなことをして聖女様が機嫌をそこねたら………」

そこまで言ってガブリエラは悟った。
オレが聖女を望んでないことを。

「なるほど。あくまでもこの世界を憎み滅ぼすつもりなんですね。ですが、そううまくは行かないかもしれませんよ?」

「何故だ?やけに自信があるようだが。聖女とはそんなに美しいか?」

「そうですね。美しいと思います。しかし、それだけではないのです。暫く見ていましたが、彼女にはなぜか殿下もエスコルピオも気を許している」

「エスコルピオとレーヴェがか!?あの二人が!?」

オレの叫び声は人気のない廊下に響いた。
レーヴェは難しい子だ。
まだ5歳だが、非常に頭が良く、繊細で滅多に人に懐かない。
エスコルピオも、人全般を信じていない。
その2人が気を許すだと!?
驚くオレに、ガブリエラはゆっくりと言った。

「………信じられませんか?では、ご自分の目で確かめて見ればいい。今夜大広間にて祝宴の場を儲けますので、是非ご出席を」

ガブリエラは優雅に挨拶をすると、踵を返し颯爽と去っていった。
残されて唖然とするオレに、ロシュが頭を掻きながら近付いた。

「俺は聖女に興味が沸きましたね。お会いするのが楽しみです」

「……ふっ。さて、どんなものか……聖女というが、変な妖術を使ったのかもしれないぞ?」

悪態を付きながら、さて、どうやって聖女を亡き者にしようか、と、そればかりを考えていた。
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