人生の続きを聖女として始めます
私の記憶は、バートラムから離れレグルスへと帰った。
一度思い出すと、堰を切ったように溢れだす切ない感情。
古い記憶を遡り、レグルスと出会った頃まで思い出してみる。
監獄ラ・ロイエの特別室。
塔の最上階に閉じ込められ、名を消された王子。
燃えるような赤茶の髪と輝く金色の瞳を初めて見たとき、全身の血が沸騰しそうなほど昂ったのが昨日のことのように思い出される。
身分違いはわかっていた。
いつでも終わりを覚悟していた。
だけど、あの頃の私はその幸せが永遠に続くものだと勘違いしていたのかもしれない。

「さて、ジュリ様、準備はよろしいでしょうか?」

思いを馳せている間に、いつの間にか大広間の前に着いていた。
ハッとして、リブラとレーヴェを交互に見ると、2人とも私の不安を取り除くかのように優しい顔で笑っている。
ただ、後ろのエスコルピオからは張り詰めた緊張が伝わって来ていた。
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