人生の続きを聖女として始めます
「レーヴェ殿下、並びに大神官リブラ、聖女ジュリ様、入室いたします!!」

リブラは大広間の前で叫び、重い観音開きの扉をゆっくりと押した。
そして、頭を下げてレーヴェを通し、次に私の手を取り歩き始める。
レーヴェを先頭に、リブラ、私、エスコルピオという順で、長方形の大広間の前方へ向かった。
夕方の大広間は、ランプが煌々と灯されとても明るい。
私は、小さいながらも堂々としたレーヴェの後ろから部屋の内部を観察した。
獅子王帰還の宴も兼ねているのか、大きなテーブルが沢山並び、その上には美味しそうな料理が載っている。
既に歓談を始めている身分の高そうな者達が、私とレーヴェを見て恭しく頭を下げた。
そして大広間の真ん中でガブリエラを発見すると、彼女は軽く手をあげ「こっちへおいで」と合図をした。

「ジュリ様、とてもお美しいですよ」

とても自然なガブリエラの誉め言葉に、私の頬は赤く染まった。
男前過ぎるのよっ!

「あ……うん!ありがと……ここで獅子王と会うの?」

「ええ。もうすぐ来るはずです……が……ああ、来ました」

ガブリエラが遠くに目をやると、さっき私達が入ってきた扉からゴツい集団が入ってきた。
近衛兵を先頭に、グレーの軍服に身を包んだ男が2人、その後に続いて歩いてくる。

「ん?あれ?ロシュさん?ドレイクさん?」

「おや?ジュリ様、何故将軍と参謀をご存じなのです?」

ほんの小声で呟いたことを、ガブリエラは聞き逃さなかった。
私は答えに困ってしまった。
だって、こんなのどう答えたらいい?
前世の記憶があるので、見たことありますなんて。
しかも、今、将軍と参謀って言ったわよね?
ラ・ロイエに収監されていた政治犯が何で国の軍部にいるのよ。
私はちょっとパニックになった。

「聖女の力です……」

そして、誤魔化した……。
困った時の聖女様、だ。

「はぁ……そうなんですか?聖女とは人知を越えた力をお持ちなのですね……」
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