人生の続きを聖女として始めます
ガブリエラは納得したのかしてないのか、不思議な表情を浮かべている。
私はもうその話を掘り起こされないように扉に目を向けた。
ロシュとドレイクは、ガブリエラを見つけると、まっすぐにこちらに向かってやって来た。
その隣にいる私に値踏みでもするかのような視線が刺さる。
辛くなって一瞬目を伏せた瞬間、俄に大広間がざわついた。
伏せた目を上げ、ロシュとドレイクの後ろの扉を見ると、わずかに覗く隙間から燃えるような赤茶の髪が見えた。
獅子王(ルリオン)だ。
そう思うと心臓が跳ねあがった。
群がる人々の中から顔をしかめたままやって来る彼は……その彼の顔は、レグルスそのものだった。
ただ違うのは、その表情には優しく愛に満ちたレグルスの欠片も無かったことだ。
獅子王はロシュとドレイクと同じ様式の軍服だけど、その色は漆黒で胸に多数の勲章が輝いている。
勲章と彼の瞳は同じ色で輝き、ランプの明かりに反射してより一層煌めいていた。
瞳を泳がせた獅子王はガブリエラを見つけ、そして私を見た。
その目は酷く恐ろしかった……。
まるで、今すぐ死ね、と言われているようで足が震えた。

「お母様、大丈夫です!」

私の恐怖を感じとったのか、レーヴェが一歩前に出て手を握ってくれた。
そして、エスコルピオもすぐ後ろで静かに臨戦態勢をとる。

「ありがとう、レーヴェ。うん、大丈夫よ」

「ジュリ様、私もついておりますから」

ガブリエラが言うと、

「わ、わ、私も!!いえ、大して役には立ちませんけど……」

と、リブラが失笑を誘った。

「ふふ。味方が多くて頼もしいです」
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