人生の続きを聖女として始めます
私はみんなを見回して言った。
そうこうする内に、ロシュとドレイク、そして獅子王はこちらへと近付いてきた。
だが、あと数歩と迫ったところで、甲高い声と共に大きな砲丸のようなものが獅子王に向かって突進した。

「陛下ーー!!」

派手なドレスを着た砲丸は、獅子王に飛び付きやたら密着してくねくねとした。

「ビクトリア……離れろ……」

獅子王は一言嗜めたが、無理に引き剥がそうとはしなかった。
ビクトリア……ああ、獅子王の妃。
この人がレーヴェの命を狙ってるのか。
私は咄嗟にレーヴェを引き寄せた。

「お帰りなさいませ、陛下。ずうっと寂しかったんですよ?今夜はいらして下さいますぅ?」

「…………………」

獅子王はイヤそうに暫く沈黙していたけど、チラッと私を見て口の端を上げた。

「そうだな。そうするか?」

「まぁ!!嬉しい!」

砲丸……ビクトリアは獅子王の首にまとわりつき勝ち誇ったようにこちらを見た。

「初めまして聖女様。私、ビクトリアと申しますわ。どうぞよろしく……ああ、でも、あなた本当に聖女なのですか?」

「それはどういう意味かな、ビクトリア様」

珍しくリブラが強気に出た。
さっきまで震える子ウサギのようだったのに今はちゃんとした神官にみえるから不思議。
しかし、獅子王を盾にしたビクトリアは怯まない。

「ふふ、だってそうでしょう?召喚が成功したと主張するのは大神官リブラ……あなただけ……その場にはあなたしかいなかったんだし?」

「何と言うことを……貴女は神を冒涜なさるのか!」

リブラは顔を真っ赤にして叫んだ。
ビクトリアはツーンと澄まして、リブラから目を逸らし、今度はレーヴェに話し掛けた。
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