人生の続きを聖女として始めます
「いやー、怖かったですねぇ?」

大広間からずいぶん離れた王宮の渡り廊下で、リブラがふーっと大きく息を吐いた。

「ほんとね……いくらなんでもやりすぎたかな?」

カッコ良く啖呵を切ってみたものの、実は心の中ではドキドキしていた。
当初獅子王に媚を売って……なんて考えていたけど、蓋を開ければまるで正反対のことをしてしまっている。
本来ならバッサリ斬られても仕方なかったかもしれないのに。
それにしても、獅子王は本当にビクトリアを寵愛してるのね……。
あんなに密着して、いやらしい!
大体レグルスと同じ顔で、変なことしないで欲しいわ。
私と彼の思い出が汚され……

「お母様?」

思案中の私はかなりおかしい百面相をしていたようで、リブラやレーヴェ、エスコルピオまで、クスクスと笑っている。

「あ、ごめん」

「いえいえ。それにしても、ジュリ様が思いの外勇ましいので、あの獅子王陛下が黙りこんでしまいましたね?」

リブラはレーヴェと顔を見合わせふふっと笑った。

「うーん、ほんとはあそこまで言うつもりじゃなかったんだけどね」

「そうなんですか?」

レーヴェが首を傾げた。

「そうよ?ビクトリアがレーヴェに触ろうとするから……」

「え!?では……お母様は……僕のために……?」

「なんかね……すごくイヤだったのよ!レーヴェがあの人に触られるの……」

レーヴェは私の腰にぎゅっと抱きつき、顔を上げて嬉しそうに笑い、そして言った。
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