人生の続きを聖女として始めます
参謀ドレイク・サウザーは面倒くさそうに頭を振った。
監獄塔ラ・ロイエへ収監されていた男は、ロシュと共に恩赦で解放され獅子王の参謀となった。
もともと彼はバートラムに嵌められて監獄送りになったのだから、囚人とはいえ無実の男だった。

「そうだな。オレもやるんじゃなかったと思ってる……」

「へぇ?珍しく反省してるのか?」

後ろからロシュが茶化した。

「あの女がオレに触れたと言うだけで吐きそうだった……レーヴェが同じことをされていたかと思うと……」

その場でビクトリアの首を落としたかもしれない。
そう言葉を続ける前に、ドレイクが割り込んだ。

「聖女様に助けられましたな。小気味良い。あの方は良き武人である」

「武人??あのたおやかな聖女様が?」

ロシュがドレイクに尋ねる。
オレも驚いてドレイクを振り返った。

「ああ。腕の筋肉が美しい。あれは、常日頃から鍛えている腕だ。恐らく……弓……であるな」

「おっと、武闘派か!人は見かけによらないな。あんな愛らしい女がな」

ドレイクとロシュは先程の出来事を振り返り、感心したように頷き合っている。
漆黒の髪、漆黒の瞳……細くか弱そうでありながら、芯は真っ直ぐで気が強い……。
聖女はオレの想像とは違った。

大広間に入る前、どうにかして聖女を遠ざけられないかを考えていた。
エスコルピオが命令を実行していれば、こんな面倒はなかったのにと、心の中で悪態もついた。
ビクトリアを利用しようとしたのも、聖女がオレの願いを邪魔する存在だと知っていたからこその苦肉の策だ。
でなければあの女に笑いかけるなどあり得ない。
ある目的の為だけに生かされているとも知らず、厚かましくもレーヴェを狙いオレに愛されているなどと吹聴するなど……。
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