人生の続きを聖女として始めます
「レーヴェ殿下は、ジュリ様を慕っています。それは、母と呼ぶほどに」

「それでなのか?」

「いいえ。それだけではないのです。実は一度、彼女を殺そうと試みたことがあります」

「うん………それで?」

「手が動きませんでした。殺意を持ってジュリ様に近付く毎に、何かの力が私を止めるのです」

「聖女の力か?」

「そうかもしれません。ですが、それだけではないのです……まだ、私も理解しきれていないことが多くて。本当に神がいると言うのなら、もしかして、こんな奇跡もありえることなのかもしれないと……」

エスコルピオはもどかしい思いを言葉にするのが難しいらしく、支離滅裂に思いを述べ始めた。

「悪いが、良くわからない……」

わかる範囲でいい、とは言ったが余りにもエスコルピオの言葉は理解不能だった。

「私は私の感覚でしか物を測れません。陛下は陛下の感覚で聖女を見定めてみては如何でしょうか?」

「お前の感覚では……聖女は守るに値するというのか?」

大広間での一件を思い出し、オレは尋ねた。
エスコルピオがビクトリアの腕を掴んだこと、あれはロシュやドレイクの言うように、誰が見てもレーヴェではなく聖女を守っていた。

「私はあの日、陛下と殿下に忠誠を誓いました。命を掛けてお二人を守ると。しかし、私の優先順位は変わったのです……陛下の命に従えなかったことはお詫びのしようもありません。バートラムの件が片付いたら処刑してくださっても結構です」

「エスコルピオ……お前……」
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