人生の続きを聖女として始めます
そういえば、ラ・ロイエにいたとき、彼らは隣接する監房にいたわね。
私は当時を少し思い出した。

ラ・ロイエ3号室のロシュ・ブラッケン。
人懐こくて明るくて、監獄塔でもムードメーカーだった。
すごく大きな人で、食べる量も半端なく監獄の食事はほぼ彼の胃の中に消えたといってもいい。
ロシュはエルナダ国の元親衛隊長で、上役の不正を告発しようとして失敗。
逆にその罪を全て被ってしまうという結果になり監獄へ送られた。

そしてラ・ロイエ4号室のドレイク・サウザー伯爵。
彼は頭が良く監獄に来る前は、物流の全てを担当していた。
だけど、闇取引に手を染めたとの密告があり、同時に証拠がズルズルと出てきてその職と身分を剥奪された。
ラ・ロイエでも、それが誰かに嵌められたのだ、と噂になっていたことがある。
だけど、ラ・ロイエでドレイクは一切の釈明をしなかった。
その潔さと高潔さに、監獄では閣下と呼ばれて他の囚人に慕われていた男だ。

その彼らがどうして獅子王の側近としてここにいるのか……それは今もって謎である……。

「お、おはようございます……少し散歩をしてて……」

私は植込みから立ち上がり、葉っぱのついたジャージの裾をパンパンと叩いた。
そして、2人に近付いてテーブルの上を覗き込んだ。
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