人生の続きを聖女として始めます
「あ、チェスですね?」

そこにはロシュが悔し紛れに駒を崩したチェス盤があり、ドレイク側の白キングだけが立っている。
私はおかしくなって笑った。
ラ・ロイエでも2人がチェスをしているのを何度も見ていたからだ。

「おや、チェスは聖女様のお国にもあるのですね?」

「え、ええ」

ロシュは空いたもう一つの椅子に私を座らせ、自らが崩した駒を直しながら言った。

「では、やり方もわかりますね?ぜひ俺の敵を取って下さい。ドレイクのやつをどうか負かして欲しいんです!」

「は?……え、いや、私そんなに強くないですし……」

チェスは良く知ってるけど、実際に駒を動かすのは初めてだったりする。
それは、ラ・ロイエにいた頃に、この2人の「エアチェス」を「聞いて」いただけだからだ。
個別の監獄にいた彼らは、向かい合ってチェスをすることは出来ない。
だから2人は、隣の房に叫びながらチェスをしていた。

「構いませんよ?ぜひお相手願います」

にっこりと微笑むドレイクと、頼むよーと懇願するロシュを交互に見て、私も笑って頷いた。
どうせ時間をもて余してるし、何かを忘れるにはちょうどいいかもしれない。
私は、ドレイクに向かって座り直すと、ロシュと一緒に駒を並べるのを手伝った。
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