嫁入り契約~御曹司は新妻を独占したい~
第2話
【第2話】
ちっとも眠れないまま朝になった。
母と弟と三人で食卓を囲む私は、茫然自失だった。テレビの音もちっとも耳に入ってこない。
そりゃそうだ。
だってこのままじゃ家族三人、路頭に迷うことになるかもしれないんだから……。
「一華、どうしたの? ぼーっとして。トースト食べないの?」
お母さんが優しい口調で言った。
私は無表情のまま、食べ盛りの弟にトーストのお皿を差し出す。
「うん……あげる、風太(ふうた)」
ぼーっとしていたせいで幾重にもバターを塗りすぎてしまったトーストを、隣に座る風太は二度見した。
「なにこのバターの厚み! お姉ちゃん、朝からこんなの食べてるから太るんだよ!」
がーん……。
風太の軽口に打ちのめされながら、もしかしたらバターだって、パンだってこれからは買えなくなるかもしれない、と悲観的になった。
「一華、大丈夫? 思いつめた顔して。具合でも悪いの?」
「う、ううん! 平気……!」
私は取り急ぎ笑顔を作り、お母さんと風太に向ける。
「なんかお姉ちゃん、笑顔が気持ち悪い……」
「そうねえ、寝不足? 目の下が黒い気がするけど」
「そ、そうかな?」
私はうまく笑えないまま、目の下に触れた。
そんなはずはないのに、指で擦ると黒い色が付着する気がして、実際にやってみる。
「一華……あなた、本当に大丈夫?」
そんな私の行動を見たお母さんは、訝るような、ヤバい人を見るような目をこちらに寄越す。
「う、うん! 大丈夫だって!」
ちっとも眠れないまま朝になった。
母と弟と三人で食卓を囲む私は、茫然自失だった。テレビの音もちっとも耳に入ってこない。
そりゃそうだ。
だってこのままじゃ家族三人、路頭に迷うことになるかもしれないんだから……。
「一華、どうしたの? ぼーっとして。トースト食べないの?」
お母さんが優しい口調で言った。
私は無表情のまま、食べ盛りの弟にトーストのお皿を差し出す。
「うん……あげる、風太(ふうた)」
ぼーっとしていたせいで幾重にもバターを塗りすぎてしまったトーストを、隣に座る風太は二度見した。
「なにこのバターの厚み! お姉ちゃん、朝からこんなの食べてるから太るんだよ!」
がーん……。
風太の軽口に打ちのめされながら、もしかしたらバターだって、パンだってこれからは買えなくなるかもしれない、と悲観的になった。
「一華、大丈夫? 思いつめた顔して。具合でも悪いの?」
「う、ううん! 平気……!」
私は取り急ぎ笑顔を作り、お母さんと風太に向ける。
「なんかお姉ちゃん、笑顔が気持ち悪い……」
「そうねえ、寝不足? 目の下が黒い気がするけど」
「そ、そうかな?」
私はうまく笑えないまま、目の下に触れた。
そんなはずはないのに、指で擦ると黒い色が付着する気がして、実際にやってみる。
「一華……あなた、本当に大丈夫?」
そんな私の行動を見たお母さんは、訝るような、ヤバい人を見るような目をこちらに寄越す。
「う、うん! 大丈夫だって!」