嫁入り契約~御曹司は新妻を独占したい~
「君のお母さんの店は、このままだと手放すのは時間の問題だ。闇金からも借金があるね」
「え⁉︎」


や、闇金⁉︎
聞いてないんだけど……。

表情を曇らせた私を見て、薫社長は
首を傾げた。


「知らなかった? 今は表立って強引な取り立てはできないからね。けど、このままじゃ良心的とは到底言えない利子は雪だるま式に増え続ける。元本の返済など無理に等しいが、君はその筋の斡旋で短期間で稼げる職に転職するか? だいたい相場は風俗とかだろうけど」
「ふふっ、風ぞ……⁉︎」
「弟さんまだ小学生だっけ。そんな姉を見たらさぞ悲しんで、家族のために自分が稼ぐとも言いだしかねない。可愛い弟には、危ない橋はなるべく渡らせたくないよね」
「しゃ、社長!」


部長がハラハラした声を出し、薫社長を制した。

気づいたら、目に涙の幕が出来ていた。
太ももの脇で握った両手が、小刻みに震える。


「悪いけど、ここで手こずってる時間さえ惜しい。今度の周年記念パーティーには婚約者として同伴してほしいと考えている」


涙で潤む視界の中で、薫社長の真剣な眼差しが揺れて見えた。


「君が同意してくれたら借金は一括で返済する用意がある。それから、君のお母さんの飲食店にも資金援助をしよう」


悔しい。
腹立たしい、けど……。


「し、資金援助……?」


心が揺れる。

未来予想図を頭の中に描く。
家族の近い未来は、たしかに悪い方ばかりへ考えると、悲観せざるを得ない。

薫社長が、自分の都合のためだけに、私を脅して利用しようとしているのなら。

私も……。


「わ、わかりました……」


返事はひとつに絞られた。
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