嫁入り契約~御曹司は新妻を独占したい~
「あら、お帰り一華! 今日は早いのね」
さっとスマホを後ろ手に隠したお母さんは、笑顔を浮かべる。
「ハンバーグ、食べるでしょ? すぐ作るね!」
ハンバーグ、と聞いて、風太も寝室から飛び出して来た。
「お姉ちゃん、お帰り!」
「あ、うん……ただいま」
冷蔵庫から玉ねぎを取り出したお母さんは、顔を強張らせて直立する私を不思議そうな目で見た。
「どうしたの? 一華」
「あっ、あのね! お母さんに、折り入って話があるんだけど……」
「もしかして、いい人でもできた?」
「え!」
アパートの狭い部屋全体に響き渡るくらいの大声が出た。
風太が驚いて固まっている。
「どど、どうしてそれを……」
「やっぱり……そうなのね。最近帰りが遅いから、そうなのかな、って」
それはバイトしてたからなんだけど……。
でもお母さんが勘違いしてくれて好都合なので、私は黙った。
「今朝もなんだかボーッとしておかしいなって思ったのよ? ふふ、あなたもそういう年頃よね。お母さんや風太に気兼ねなんてしなくていいから、デートでもなんでも楽しんでらっしゃい」
柔らかい表情で、お母さんは軽やかに言った。
「今までは全然男っ気がなかったから、お母さん嬉しいな。どんな人なの?」
「そ、それは……」
声が掠れた。
キョトンとした顔で、風太が私を食い入るように見つめている。
「会社の人、なんだけど……」
「へえ、社内恋愛かぁ。お母さんも憧れるなぁ、そういうの!」
動悸が速い。
喉が収縮したように苦しくなった。
「け、結婚を……考えてて」
それまで両手を合わせて娘の初の恋バナにウキウキした様子だったお母さんは、真面目な面差しになった。
さっとスマホを後ろ手に隠したお母さんは、笑顔を浮かべる。
「ハンバーグ、食べるでしょ? すぐ作るね!」
ハンバーグ、と聞いて、風太も寝室から飛び出して来た。
「お姉ちゃん、お帰り!」
「あ、うん……ただいま」
冷蔵庫から玉ねぎを取り出したお母さんは、顔を強張らせて直立する私を不思議そうな目で見た。
「どうしたの? 一華」
「あっ、あのね! お母さんに、折り入って話があるんだけど……」
「もしかして、いい人でもできた?」
「え!」
アパートの狭い部屋全体に響き渡るくらいの大声が出た。
風太が驚いて固まっている。
「どど、どうしてそれを……」
「やっぱり……そうなのね。最近帰りが遅いから、そうなのかな、って」
それはバイトしてたからなんだけど……。
でもお母さんが勘違いしてくれて好都合なので、私は黙った。
「今朝もなんだかボーッとしておかしいなって思ったのよ? ふふ、あなたもそういう年頃よね。お母さんや風太に気兼ねなんてしなくていいから、デートでもなんでも楽しんでらっしゃい」
柔らかい表情で、お母さんは軽やかに言った。
「今までは全然男っ気がなかったから、お母さん嬉しいな。どんな人なの?」
「そ、それは……」
声が掠れた。
キョトンとした顔で、風太が私を食い入るように見つめている。
「会社の人、なんだけど……」
「へえ、社内恋愛かぁ。お母さんも憧れるなぁ、そういうの!」
動悸が速い。
喉が収縮したように苦しくなった。
「け、結婚を……考えてて」
それまで両手を合わせて娘の初の恋バナにウキウキした様子だったお母さんは、真面目な面差しになった。