嫁入り契約~御曹司は新妻を独占したい~
第4話
【第4話】
数日後、薫社長が出張から帰ってきた。
けれど、帰宅は夜遅いことが多く、生活ペースはすれ違い、一緒に食事をとることはおろか顔すらまともに合わせずにいる。
それでも私は多めに夕食を作って、冷蔵庫に入れておいている。
薫社長が契約書を書き換えると言っていたので、家事も仕事と思って割り切ってやっている。
翌日まで冷蔵庫に残っていた料理はもったいないから朝に食べ、出社するのが何日か続いたある日。
「ほらほら、あの人だよ! 薫社長の婚約者」
「えー、本当に総務のあんな目立たない子と付き合ってたんだ! よく今までバレなかったよね!」
そりゃそうだ、と思った。
付き合っている期間なんてゼロなのだから。
社員食堂で詩織とランチ中、うどんを啜っていると、背後のテーブル席に座っている女子社員たちがヒソヒソどころじゃない丸聞こえな大声で、私の噂をしている。
「でも、超玉の輿だよね。シンデレラストーリーっていうの? 大人しそうな顔してやるよね!」
「後輩で同期だって男が言ってたんだけど、飲み会にもほとんど参加しないみたいで、影が薄いから名前聞いても顔がすぐ浮かばなかったって!」
へぇ〜! と大仰に相槌を打ち、後方の席は大層盛り上がっている様子。
「大丈夫? 一華」
詩織が心配そうな顔で、箸を持つ手が止まっている私を見つめた。
「うん、平気……はは」
正式に婚約発表する前に噂になれば、こうなることは予想はついてた。
気を取り直してうどんを食べようと大口を開けたとき、周囲からの突き刺すような視線に気づいた。
四方八方から、好奇心に満ちた顔つきがこちらに向けられている。
「……明日からは総務部のオフィスで食べようかな。お弁当持ってきて」
「そうだね、私も付き合うよ」
「ありがとう、詩織」
詩織がいてくれて良かった。
居心地の悪い社内で、事情を知っている存在は心強かった。
数日後、薫社長が出張から帰ってきた。
けれど、帰宅は夜遅いことが多く、生活ペースはすれ違い、一緒に食事をとることはおろか顔すらまともに合わせずにいる。
それでも私は多めに夕食を作って、冷蔵庫に入れておいている。
薫社長が契約書を書き換えると言っていたので、家事も仕事と思って割り切ってやっている。
翌日まで冷蔵庫に残っていた料理はもったいないから朝に食べ、出社するのが何日か続いたある日。
「ほらほら、あの人だよ! 薫社長の婚約者」
「えー、本当に総務のあんな目立たない子と付き合ってたんだ! よく今までバレなかったよね!」
そりゃそうだ、と思った。
付き合っている期間なんてゼロなのだから。
社員食堂で詩織とランチ中、うどんを啜っていると、背後のテーブル席に座っている女子社員たちがヒソヒソどころじゃない丸聞こえな大声で、私の噂をしている。
「でも、超玉の輿だよね。シンデレラストーリーっていうの? 大人しそうな顔してやるよね!」
「後輩で同期だって男が言ってたんだけど、飲み会にもほとんど参加しないみたいで、影が薄いから名前聞いても顔がすぐ浮かばなかったって!」
へぇ〜! と大仰に相槌を打ち、後方の席は大層盛り上がっている様子。
「大丈夫? 一華」
詩織が心配そうな顔で、箸を持つ手が止まっている私を見つめた。
「うん、平気……はは」
正式に婚約発表する前に噂になれば、こうなることは予想はついてた。
気を取り直してうどんを食べようと大口を開けたとき、周囲からの突き刺すような視線に気づいた。
四方八方から、好奇心に満ちた顔つきがこちらに向けられている。
「……明日からは総務部のオフィスで食べようかな。お弁当持ってきて」
「そうだね、私も付き合うよ」
「ありがとう、詩織」
詩織がいてくれて良かった。
居心地の悪い社内で、事情を知っている存在は心強かった。