嫁入り契約~御曹司は新妻を独占したい~
けれども、まるで一時停止ボタンを押したかのようにピタリと動きを止めた薫さんは、真顔で息を飲んだ。
「そんな声も出せるんだな。不覚にもドキッとしたよ」
からかうようないたずらな笑顔でそう言うと、私の頭をポンと撫でる。
顔中が熱くて、触れられた頭から温泉みたいな湯気が出てそうだった。
私たちは車を降り、アパート一階の角部屋の前まで歩く。
……リラックスするどころか余計緊張しちゃったような気がする。
「た、ただいま……」
ドアノブに手をかけて回した。
引っ越してまだ一週間くらいのに、ドアを開けた瞬間の実家の匂いはすごく懐かしく感じた。
「おかえり、一華」
お母さんはリビングのテーブルに、花を飾っていた。
私と、私の背後に立つ薫社ちょ……薫さんを見て、にっこりと頬を綻ばせた。
「まあまあ、いらっしゃいませ。こんな狭いところですみません」
「はじめまして。櫻葉薫と申します」
とても美しい角度で一礼した薫さんに対し、お母さんは笑顔を貼り付けたまま目を瞬かせた。
「櫻葉……?」
「櫻葉株式会社で社長を勤めております。一華さんとは社で出会いまして……」
「え、え! ちょっと待って!︎」
大声を出し、後ずさりをする。
思った通りの盛大なリアクションを披露して、私と薫さんを順番に見比べた。
「一華の結婚相手が、会社の社長さん⁉」
悲鳴のようなお母さんの声に、何事かと思ったのか寝室から風太が出てきた。
そして自分よりも遥かに背の高い相手を見上げ、呆気に取られた表情で呟いた。
「こんなイケメンがお姉ちゃんの彼氏? 嘘だろ……」
家族たちの正直すぎる反応に恥ずかしくてたまらない私に対し、薫さんは満更でもない様子で王子様のような品のよいスマイルを浮かべている。
「そんな声も出せるんだな。不覚にもドキッとしたよ」
からかうようないたずらな笑顔でそう言うと、私の頭をポンと撫でる。
顔中が熱くて、触れられた頭から温泉みたいな湯気が出てそうだった。
私たちは車を降り、アパート一階の角部屋の前まで歩く。
……リラックスするどころか余計緊張しちゃったような気がする。
「た、ただいま……」
ドアノブに手をかけて回した。
引っ越してまだ一週間くらいのに、ドアを開けた瞬間の実家の匂いはすごく懐かしく感じた。
「おかえり、一華」
お母さんはリビングのテーブルに、花を飾っていた。
私と、私の背後に立つ薫社ちょ……薫さんを見て、にっこりと頬を綻ばせた。
「まあまあ、いらっしゃいませ。こんな狭いところですみません」
「はじめまして。櫻葉薫と申します」
とても美しい角度で一礼した薫さんに対し、お母さんは笑顔を貼り付けたまま目を瞬かせた。
「櫻葉……?」
「櫻葉株式会社で社長を勤めております。一華さんとは社で出会いまして……」
「え、え! ちょっと待って!︎」
大声を出し、後ずさりをする。
思った通りの盛大なリアクションを披露して、私と薫さんを順番に見比べた。
「一華の結婚相手が、会社の社長さん⁉」
悲鳴のようなお母さんの声に、何事かと思ったのか寝室から風太が出てきた。
そして自分よりも遥かに背の高い相手を見上げ、呆気に取られた表情で呟いた。
「こんなイケメンがお姉ちゃんの彼氏? 嘘だろ……」
家族たちの正直すぎる反応に恥ずかしくてたまらない私に対し、薫さんは満更でもない様子で王子様のような品のよいスマイルを浮かべている。