嫁入り契約~御曹司は新妻を独占したい~
「先程は取り乱してしまって大変失礼いたしました。お店で出してるコーヒーです。お口に合うといいんですけど……」
いつもより数倍外行きの声でお母さんが言い、とっておきのスペシャルブレンドを私と薫さんに振る舞った。
「ありがとうございます。いただきます」
一口コーヒーを啜る、その行動ひとつとってみても映画のワンシーンのように絵になる。
お母さんと風太は、さっきから薫さんから目を離せずにいる。
「芳醇な香りですね。とっても美味しいです」
「よかったです! ありがとうございます」
ホッとした声でお母さんが言う。
「良かったらコーヒー豆持ってってください!」
「それ、お店で出すやつでしょ? 持たせなくていいから……」
パタパタと忙しなくキッチンに向かうお母さんに、私は溜め息を吐いた。
「お店と言えば、飲食店をなさってるそうですね。一華さんから聞きました」
「そうなんです、自分の店を持つことがずっと夢でして。といっても、上手くいってるとは言い難いんですけどね……お恥ずかしい」
自嘲気味にお母さんが言う。
すると、淹れたてで熱々のコーヒーを飲み干した薫さんが、お母さんの方に体を向き直して真剣な表情になった。
「こんなに美味しいコーヒーを出すなんて、きっと素敵なお店なんでしょうね。私と一華さんが結婚した暁には、ぜひ資金援助させてください」
「し、資金援助……?」
ただおうむ返しをしたお母さんは間の抜けた表情で薫さんをぽかんと見つめた。
「はい。一華さんが大切にされているものを、私も守りたいんです」
自信と男気に溢れた薫さんの言葉を、お母さんはまだ狐につままれたような顔で聞いていた。
私の大切なもの……。
家族を守ってくれる、ということだ。
いつもより数倍外行きの声でお母さんが言い、とっておきのスペシャルブレンドを私と薫さんに振る舞った。
「ありがとうございます。いただきます」
一口コーヒーを啜る、その行動ひとつとってみても映画のワンシーンのように絵になる。
お母さんと風太は、さっきから薫さんから目を離せずにいる。
「芳醇な香りですね。とっても美味しいです」
「よかったです! ありがとうございます」
ホッとした声でお母さんが言う。
「良かったらコーヒー豆持ってってください!」
「それ、お店で出すやつでしょ? 持たせなくていいから……」
パタパタと忙しなくキッチンに向かうお母さんに、私は溜め息を吐いた。
「お店と言えば、飲食店をなさってるそうですね。一華さんから聞きました」
「そうなんです、自分の店を持つことがずっと夢でして。といっても、上手くいってるとは言い難いんですけどね……お恥ずかしい」
自嘲気味にお母さんが言う。
すると、淹れたてで熱々のコーヒーを飲み干した薫さんが、お母さんの方に体を向き直して真剣な表情になった。
「こんなに美味しいコーヒーを出すなんて、きっと素敵なお店なんでしょうね。私と一華さんが結婚した暁には、ぜひ資金援助させてください」
「し、資金援助……?」
ただおうむ返しをしたお母さんは間の抜けた表情で薫さんをぽかんと見つめた。
「はい。一華さんが大切にされているものを、私も守りたいんです」
自信と男気に溢れた薫さんの言葉を、お母さんはまだ狐につままれたような顔で聞いていた。
私の大切なもの……。
家族を守ってくれる、ということだ。