嫁入り契約~御曹司は新妻を独占したい~
「前から思ってたんだけど、一華は暗い色より明るい色の方が似合うよ」
「え?」


自分が持っている真っ赤なドレスと、私が手にした紺色のドレスを見比べた薫さんが、いつになく真剣な顔で言った。


「香山の着物も藍色だっただろ? あれはあれで落ち着いてて良かったけど、もっと明るい華やかな色の方が似合うって俺は確信してたんだ」


香山の着物?
って、初めて会ったときに着てた……。

なぜ今になってそんな話を……と不思議に思っている私の体に、勝手に薫さんは真っ赤なドレスをあてがった。


「それに一華は足も、背中も綺麗なんだから、思いきって出した方がいい」


大きな鏡の前に私を誘導し、背後に立って耳元で囁やく。
首筋に吐息があたってくすぐったい。


「で、でもさすがに人前でこれは……!」


照れ隠しでつい子どもみたいに声が大きくなった。


「たしかにあまり大勢の人前で一華の素肌を晒すのは本意ではないけど。素肌が綺麗なのは、俺が保証する」


私には勿体ないくらいの甘い言葉を聞いて、真っ先に赤面したのは付き添ってくれている店員さんだった。
鏡越しに目が合って、とてつもなく気まずい。


「へ、変なこと言わないでくださいよ……!」


私、素肌を晒した覚えはないんですけど!

口をぱくぱくさせて抗議する私に、薫さんはただ余裕っぽくふっと笑った。


「どちらもとってもお似合いだと思いますよ、櫻葉様」


店員さんにフォローされ、私は亀みたいに首を引っ込めて小さくお礼を言った。

それから花柄の黒いレースのドレスと、ペールピンクのふんわりとしたスカートが可愛いシンプルなデザインのドレスを見て、結局ピンクを試着してみることになった。
丈が膝上で短くてガーリーすぎるカラーが私なんかに似合うのかと疑問だったけど、薫さんがどうしてもこれがいいと押し切った。
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