嫁入り契約~御曹司は新妻を独占したい~
「……はい」
「解除するなら一ヶ月前から申し出てもらう必要があり、それ相応の理由もきちんと話してもらわなくては困る。それをこんなメールひとつで……」
言いながら、ジャケットのポケットからスマホを取り出した薫さんは、画面にメッセージを表示させこちらに掲げて見せる た。
私が打った簡素な文が、ゴシック体で映し出される。
たった六文字。
〝ごめんなさい〟
「こちらとしてもそれなりにリスクを侵して契約したんだ。君には、責任感ってものはないのか?」
「も、申し訳ありません……」
鼻にかかった声が出た。
心底億劫そうな溜め息が、真正面から聞こえた。
「理由を話してくれ」
引き締まった表情で、薫さんは冷静な声で言った。こんなときでも動じる素振りなど露ほどもない。
対して私はひるみそうになる気持ちを押し殺すように、奥歯にキュッと力を入れる。
「無理なんです、もう」
「……無理って、なにが?」
「薫さんと一緒に暮らすのが、です」
真っ直ぐに目を見れない。
私は視線を斜め下に落とし、心の雑念を鎮めるように息を吐いた。
「今更ですけど元々私には社長夫人なんて分不相応だし、それに、契約に縛られて演技してこれからも生きていくんだなって思ったら、すごく窮屈で逃げ出したくなったんです」
そこまで一息に言うと、平衡感覚を失うくらい、体が疲弊した。
電車に揺られているように、ふらっと真横に揺れた上半身を、なんとか両足でバランスを取る。
たたきに立つ薫さんは、伸ばそうとした手を所在なさげに浮かせた。
「中途半端に解消してしまったことは謝ります。処分でもなんでも受けますから、」
「一華、」
「ですからどうかもう、帰ってく」
「出てけよ!」
「解除するなら一ヶ月前から申し出てもらう必要があり、それ相応の理由もきちんと話してもらわなくては困る。それをこんなメールひとつで……」
言いながら、ジャケットのポケットからスマホを取り出した薫さんは、画面にメッセージを表示させこちらに掲げて見せる た。
私が打った簡素な文が、ゴシック体で映し出される。
たった六文字。
〝ごめんなさい〟
「こちらとしてもそれなりにリスクを侵して契約したんだ。君には、責任感ってものはないのか?」
「も、申し訳ありません……」
鼻にかかった声が出た。
心底億劫そうな溜め息が、真正面から聞こえた。
「理由を話してくれ」
引き締まった表情で、薫さんは冷静な声で言った。こんなときでも動じる素振りなど露ほどもない。
対して私はひるみそうになる気持ちを押し殺すように、奥歯にキュッと力を入れる。
「無理なんです、もう」
「……無理って、なにが?」
「薫さんと一緒に暮らすのが、です」
真っ直ぐに目を見れない。
私は視線を斜め下に落とし、心の雑念を鎮めるように息を吐いた。
「今更ですけど元々私には社長夫人なんて分不相応だし、それに、契約に縛られて演技してこれからも生きていくんだなって思ったら、すごく窮屈で逃げ出したくなったんです」
そこまで一息に言うと、平衡感覚を失うくらい、体が疲弊した。
電車に揺られているように、ふらっと真横に揺れた上半身を、なんとか両足でバランスを取る。
たたきに立つ薫さんは、伸ばそうとした手を所在なさげに浮かせた。
「中途半端に解消してしまったことは謝ります。処分でもなんでも受けますから、」
「一華、」
「ですからどうかもう、帰ってく」
「出てけよ!」