ポルターガイスト~封じられた扉~
その理由にあたしは目を見開いた。


「それだけ?」


「そう。それだけ」


そう言ってクスッと笑って見せる。


「だけどそれは私にとって一大決心でした。オモチャを買ってくれないなら、他の家の子になる覚悟でしたから」


「そうだったんだね……」


どれだけくだらないと感じられる理由でも、その時は本気だったんだ。


「それからどうなったの?」


「探しに来た両親に見つかって、家に連れ戻されました。オモチャはなし、こっぴどく怒られただけで終わりです」


そう言って笑う。


「だけど、あれはいい経験だったんです。誰であれ、こうして迎えに来て心配してくれる人がいる。それは、幸せなことだと気が付いたから」


家政婦さんはあたしの体を抱きしめた。


あたしを大切にしてくれる人は両親じゃない。


だけど、迎えに来て抱きしめてくれる人はいる。


あたしは家政婦さんの胸に抱かれながら目を閉じた。


今も両親に愛され、スヤスヤと眠っている洋司のことを考えながら……。
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