ポルターガイスト~封じられた扉~
洋司は「わぁー!」と歓喜の声をあげて桶の中の水を掻き雑ぜた。


小さな手が動く度に、パシャパシャと水音が跳ねる。


「洋司、勉強はいいの?」


いつまでもここにいたら怒られてしまうと思い、あたしは言った。


すると洋司はプゥッと頬を膨らませて、イヤイヤと左右に首をふる。


「勉強するのが嫌なの?」


そう聞くと、今度はコックリと頷いた。


「だけど、お父さんもお母さんも、洋司洋司って言ってくれてるじゃん」


その半面、あたしの名前は呼ばれなくなった。


途端に嫌な感情が胸に浮かんで来て、あたしはそれを必死で押し込めた。


「遊びたい!」


洋司はふくれっ面のまま言う。


ずっと勉強勉強じゃあ嫌になる気持ちも理解できた。


あたしだって、休みなく学校で勉強するのは嫌だった。


だけど、洋司の場合は違う。


常に両親が隣にいて勉強を教えてもらっているのだ。
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