ポルターガイスト~封じられた扉~
☆☆☆

1時間後、洋司がいなくなったことで家の中は台風のように大騒動になっていた。


休暇を取っていた家政婦さんは呼びつけられ、家に戻って来た。


両親も家政婦さんも、そしてあたしも一緒になって洋司を探した。


あたしが家出をしたことには気が付かなかったくせに。


そんな気持ちを抱いたまま、形だけ捜索に加わる。


それでも洋司は出てこない。


トイレにも、お風呂にも、押入れの中にもいない。


両親は汗だくになって洋司を捜し、外へ飛び出していった。


家に残されたのはあたしと家政婦さんの2人きり。


もし洋司が家に戻って来たときに誰がいた方がいいと言われたからだった。


「亜香里お嬢様、正直に話してください。誰にも言いませんから」


両親が外へ出た後、家政婦さんは真剣な表情でそう言った。


その顔は青ざめている。


家政婦さんはすでになにかに感づいているようで、あたしは素直に出来事を説明した。


まさか井戸に落ちたくらいで人間が死んでしまうとも、思っていなかった。


ただ、暗い井戸の中で怖く寂しい思いをすればいいと思っていただけだった。

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