ポルターガイスト~封じられた扉~
☆☆☆

洋司は死んだ。


1時間以上冷たい井戸に体を浸していた洋司の頬は、もう赤くはなかった。


触れてみても石みたいに硬くて、あたしは困惑した。


赤い頬に暖かな肌に、プニプニとした心地い感触。


それらをもう、洋司は持っていなかった。


それからなにをしていたのかあまり記憶にない。


気がついたら洋司の葬式は終わっていて、あたしはまたいつも通りの毎日が訪れた。


誰もいない部屋の中で、たった1人でお人形遊びをする。


夏の日差しが暑いから井戸へ向かって見ても、そこには丸い石の蓋が被せられていて、とても動かせなかった。


あたしはやることもなく、両親との会話もなく、ただ生きていただけだった。
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