ポルターガイスト~封じられた扉~
「洋司はお前のせいで死んだんだ」


ある日の夜。


トイレに立った時偶然父親とすれ違い、そう言われた。


父親はひどくお酒臭くて、思わず鼻をつまんだ。


「あたしはなにもしてない!」


家政婦さんには本当のことを話たけれど、誰にも言わないと言ってくれた。


家政婦さんは約束を守る人だった。


「嘘をつけ! 全部知ってるんだぞ!」


父親はあたしの頬を殴り、怒鳴りつけた。


殴られたあたしは床に崩れ落ちて立ち上がることができなかった。


どれだけ無関心でも、手をあげることは今まで1度もなかったのに。


同時に、家政婦さんが自分を裏切ったということを知ってショックだった。


深い傷が胸の奥に刻まれる。


誰にも言わないと言ったから、正直に話したのに!


一番信用していた人に裏切られることが、これほど悲しいことだと生まれて初めて知った瞬間だった。


「お前が死ねばよかったんだ」


父親はあたしを見下ろして、そう言い捨てたのだった。
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