ポルターガイスト~封じられた扉~
「桜さん。高校の生徒さんたちが来てくれましたよ」


男性介護士が声をかけると、ベッドの布団がモゾモゾと動いた。


「背中、起こしますね」


そう言い、介護用ベッドを操作する。


上体を起こした老人の顔をようやく見ることができた。


顔はしわだらけで随分と痩せている。


けれどあたしたちを見た瞬間、その老人はほほ笑んだように見えた。


「今日は機嫌がよさそうだ。なにかあったら、そこのナースコールを押してくださいね」


男性介護士はそう言うと部屋を出て行った。


「はじめまして。私は桜高校に努めています」


「おぉ……あれは……ワシが創ったんだ」


先生がベッドの隣へと移動すると、桜さんは嬉しそうに表情を緩めている。


あたしたちも、そっとベッドに近づいた。


「良い制服だ」


桜さんはあたしたちの制服を品定めするように見つめて、そう言った。


時々人の認識ができなくなるらしいけれど、今日は大丈夫そうでホッとする。
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