ポルターガイスト~封じられた扉~
「あたしずっと寂しかったの。お父さんもお母さんも、全然あたしを見てくれなかったから」


広貴の胸に顔をうずめて泣き叫ぶ亜香里ちゃん。


その心の悲鳴はきっと誰にも届かなかったのだろう。


今ようやっと吐き出すことができたのだ。


「辛かったな。でももう大丈夫だから。成仏すればきっと沢山の友達が待っているから」


いつまでもこんな部屋に閉じこもっていては、亜香里ちゃんは悲しいままだ。


「あたしも早く行きたかった。だけどそれができなくて」


途端に亜香里ちゃんの声色が低く変化した。


広貴が驚いて身を離す。


亜香里ちゃんの目から零れていた涙が黒い水に変化して、異臭をまき散らし始めたのだ。


「お姉ちゃんだけ成仏するなんて許さない! 僕を殺しておいて幸せになるなんて許さない!」


それは洋司君の声だった。


やっぱり、亜香里ちゃんの体の中にはまだ洋司君の魂がいたのだ。


だからここから抜け出すこともできなかったのだろう。


「洋司君。亜香里ちゃんはもう充分苦しんだよ? 両親から愛されなくなってすごく悲しくて、その後も洋司君に取りつかれてたんだよ?」


あたしは必死に洋司君へ向けて声をかける。

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