ポルターガイスト~封じられた扉~
「紀人がそそっかしいのが悪いんだぞ」


元浩は1人でケラケラと声を上げて笑っている。


「うるさいなぁ」


紀人はブツブツと文句を言いながら立ち上がり、汚れたズボンを手で払う。


「なぁ、これ……」


どこかボンヤリとしたような声で言ったのは広貴だった。


広貴は半分ほど中身が零れてしまったペットボトルを持ったまま、壁を指さしている。


「なに?」


質問しながら壁に視線を向けると、そこには大きなシミができていた。


ジュースがかかってしまったんだろう。


「あ~、ちゃんと拭き掃除しなきゃね」


あたしが雑巾を取りに移動しようとしたとき、広貴が腕を掴んで引き止めていた。


「そうなんだけど、ちょっと変じゃないか?」


「え?」


広貴の言葉にもう1度視線を壁へ向けた。


ジュースがかかった部分が黒くシミになっているだけで、妙なところはどこにもない。


それより、はやく掃除しないと取れなくなってしまうかもしれない。

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