私が王子の彼女役? (365枚のラブレター もう1つの恋)

「缶バッチで無駄な時間つかっちゃったじゃん!

 舞!
 今からコロニア島に行くからな!」



「ん?それって魔法界?」



「舞さ
 一応魔法界の人間なんだから
 それくらい勉強しろよな

 俺の毎日の自由時間は
 魔法界のいろんな地方に行ってんの」


何をしに?って聞こうと思った



でも遠い遠い地平線を見つめるエイトが
大人びて見えて
私はそれ以上は聞けなかった




『エイト王子だ!!』

『お久しぶりです』

『みんなを呼んで来い!
 エイト王子が来たって』



エイトが瞳を閉じただけで
私も一緒に瞬間移動



到着したのは
マリンブルーの海に360度囲まれた
星形の島だった



そこに魔法界特有の
ドーナツを5個つみ重ねたような家が
10軒ほど並んでいた



階ごとに色が違って
淡いピンクや、水色、クリーム色など
パステルカラーの建物



着いた時には3人しかいなかった住人が
ワサワサ増えて
30人くらいがエイトを取り囲んでいる



「エイト王子、おかわりないですか?」



「それって元気かってことだよな?

 見てのとおり元気が有り余ってるって感じだ

 ま、前来た時よりも
 イケメンオーラが倍増してるけどな」



「エイト
 前来たのって1か月以上前じゃん
 もっと会いに来いよ」



人間界の小1くらいの男の子が
エイトにタメ口をきいている



「こら!サクヤ!
 王子に敬語を使わんか!」



「ヒヨ爺良いって!

 俺は距離とらずに
 ガンガン来てくれる奴が好きだからな!

 それにサクヤは
 子供のころの俺にそっくりだしな」



「エイト、ホントか?」



「ああ~生意気なとことかな」



6歳くらいのサクヤ君に
胸をボンボン叩かれながら
子供みたいに無邪気に笑っているエイト



王子って言うから
もっと魔法界の人と距離をとって
上から命令する感じなのかと思っていた



エイトが笑うとみんなも笑い

みんなが笑うとエイトも笑う



エイトって
魔法界に人から愛されている王子だったのね




「エイトの隣にいるのって……

 召使い?」



め…召使い??



彼女って言われるかと思ったら
私のこと召使いですか??



人間界の高校の制服を着てるけど
さすがに召使いは……



エイトはなんて答えるんだろう
ドキドキしながらエイトを見ると

エイトが私を見て微笑んだ



「俺の彼女だから」



その言葉に
住民たちがみんな固まっている



そして



『え~~~!!!!!』



10代の女子たちの悲鳴が
この島に響き渡った



「なんだよ!
 お前たちに一番早く紹介しに来てやったのに」



「エイト王子、私は祝福しますよ」



お年頃の女子以外は
エイトに彼女ができて喜んでくれているみたい



「でも、彼女さんを紹介するのは
 この狭い島だけにしておいた方が良いですよ」



「なんでだよ」



「彼女さんに
 危害が加えられるかもしれませんからの」



え?危害?

私、なにかされちゃうの?



でもそれはあるかもしれない



エイトの取り巻き女子だって
彼女って聞いて
私をにらみつけていたくらいだから




「大丈夫だって!

 そん時は俺が守ってやるから! 

 な、舞!」



え?



そんな男らしい瞳で見つめてこないでよ!


私を守るなんて言わないでよ!


顔が赤くなっちゃうから
うつむくことしかできないじゃん!




このままエイトのことを見ていたら
私がエイトにドキドキしているのが
間違いなくバレる



私は自分の顔をエイトに見られたくなくて
花摘みをして微笑む子供たちの所に逃げ込んだ




「やべ!もうこんな時間だ!
 また近いうちに来るから
 楽しく過ごせよ!」



「エイト、またな!」



「おう!」



私は住民にぺこりと頭を下げると
エイトの魔法で
またクスノキの前に戻ってきた
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