私が王子の彼女役? (365枚のラブレター もう1つの恋)
「エイトってさ…
良い国王になれそうだね」
え?
俺が?
良い国王??
そんなこと誰かに言われたの
初めてだ
「ムリ!ムリ!
俺が良い国王なんてなれるわけないじゃん
テキトーなこと言うなよ」
「本当にそう思ったよ」
「舞はさ、俺の親父を知らねーだろ!
親父は国王として完璧だ!
国民の誰も逆らわない」
「私は逆らえない国王より
エイトみたいに
国民の心にズカズカ入ってくる
フレンドリーな国王の方が良いな」
「それって褒めてねえし」
「褒めてるよ!
本当にそう思うもん
国王に必要なのは
国民を笑顔にするパワーだよ。きっと。
だからエイトは
今の国王よりも素敵な国王になれるよ!」
やべー
舞に言われると、すっげー嬉しい
俺はテレて火照った顔を舞に見られたくなくて
とっさに横を向き顔を隠した
リーンリリーン
二人だけのシャボン玉のような
ふわふわ空間に響いたこの音は
俺がセットしておいたタイマー
舞とのサヨナラの時間を告げる
切ない風鈴の音
「エイト、風鈴好きなの?」
「ああ
風鈴の音を聞くと、なんか落ち着くからさ
舞は、風鈴好き?」
「私は……大嫌い……」
なんだ?
今にも泣きだしそうな舞のこの表情は?
「ごめんごめん、もうサヨナラの時間だよね
あ、わたしをこんな高い所に
置き去りにしないでよ」
「あ、ああ」
いつもなら『どうしよっかな』くらいの
冗談を言うところだが
さっきの舞の悲しそうな顔が頭から離れず
俺は素直に瞬間移動して下まで送った
「舞…明日も来てくれるよな?」
「え?
もちろんエイトに会いに来るよ
そうしないとクララのこと
協力してくれないでしょ」
舞の笑顔が見られて
とりあえずホッとした
でも
舞は何か、黒い闇を心に抱えていそうで
隣にずっといてやりたいなと思ってしまった