私が王子の彼女役? (365枚のラブレター もう1つの恋)
☆舞side☆
「魔法界の国王様!
どうか……
クララをこの世に戻してください……」
私はそれを伝えたくて
毎日、人間界から魔法界のお城に通っている
もう11か月も
それなのに
国王様に会えないばかりか
門番さえ出てきてはくれない
「クララに謝りたいのに……」
触るとグニョとへこむ
スライムみたいな城の門は
魔法じゃないと開かないみたい
生まれて17年
人間界で育った私には
魔法の一つも使えないのに
いつものように
人間界に帰ろうと肩を落として歩いていると
「キャー エイト様!」
「カッコイイ!!」
「お願い!私とお付き合いして!」
女子、女子、女子の人だかりが
私の方にだんだん近づいてきた
その真ん中にいるのは
魔法界の王子 エイト様
肩まで伸びた
ゆるフワの髪は濃い紫色で
前髪を左右に分けたエイト様は
ワイルド王子で魔法界の女子たちに大人気
あれが魔法界の王子様
初めて見た
でも私には関係ない
私は国王様に会いたいだけだから
私は道の隅により
ラブ台風が通り過ぎるのを待っていると
「え?」
エイト様が私の前に来て
急に私の肩を抱き寄せた!
「俺、この子と付き合ってるから!」
え?
えええええ?
この子って……
私ですか?
「ね~」
エイト王子が、私を見て微笑んだ
アメジストのような
透き通った紫色の瞳に見つめられ
私の心臓はドクンドクン音を立てている
『ね~』って言われても……
エイト王子に
付き合ってって言われたこともなければ
会ったのだって今日が初めてなのに……
20人くらいの女子たちが
天敵を威嚇するような目で
私をにらんでいる
なに?なに?
私は王子様なんて興味ないよ
『彼女ではありません』と
きっぱり言おうとした時
私の耳元で、エイト王子がささやいた
「クララのこと、協力するから」
「え?」
私が目を見開いて王子を見つめると
「よろしくな」
人懐っこい笑顔で
エイト王子が微笑んだ