私が王子の彼女役? (365枚のラブレター もう1つの恋)
その思いを秘めていたころ
俺は城の前で
泣き叫ぶ女の子を見た
「国王様!お願いします!
クララを!人間界に戻してください!」
何度も何度も叫んでは
城の壁を叩き
その場にしゃがみこんで泣き続ける
そして光を失った目をしながら
肩を落とし帰っていく
俺は城の自分の部屋に
魔法で透明スクリーンを出すと
毎日その子の様子を見ていた
腰まであるサラサラな黒髪
瞳はまるで黒水晶のように透き通っていて
スクリーンにその子が映ると
なぜか目が離せられなくなってしまう
1か月が過ぎたあたりから
その子は泣き叫ぶようなことはなくなった
でもギラギラの太陽が肌を痛めつけようが
嵐で横殴りの雨が襲い掛かってこようが
その子は毎日魔法界に来て
門の前で小さくなって泣いていた
「クララに会わせてくださいって」
俺はクララを知っている
1年前まで
俺の家庭教師をやっていたのが
2歳年上のクララだ
その頃の俺は
ひそかにクララが好きだった
今思うと
好きと言うより
恋に憧れていたんだと思う
なぜなら
クララが好きと思っていたころより
話したこともない
スクリーンでしか見たこともないその子のことが
気になって気になってどうしようもなかった
今すぐその子の隣に行って
心の傷を俺が癒してあげたい
この子を笑顔にしてあげたい
本気でそう思うようになった
でも……
俺には3月には婚約をする許嫁がいる
だからその子と付き合えたとしても
いつかわかれなければいけないときが来る
俺はどうしたらいいんだ……
その子と一緒にいたい!
その子の願いを、俺が叶えてやりたい!
その思いが強くなり
今日、その子にお願いをしたのだ
『俺の彼女役をやってって』