桜が咲く日、桜の下で、想いを描く



翌日、私は1人で席に座り、絵を描いていた。

「紗綾ちゃん、上手いじゃん!漫画家になるの?」

私の前に座っている子が、私の絵を見ながら言う。私は、微笑んで「ありがとう……」と返した。

……いや、漫画家になりたいわけじゃ……。

「誰、描いてんの?」

たまたま近くに来た香澄ちゃんが、私の絵を覗き込み、聞く。

「……うーん……名前もなき女の子かな」

適当に落書きしてたので、名前もない子と返すことしか出来ない。

私は、ふと香澄ちゃんに目を移し、影やシワを観察する。自然と、建物の形や影のなり方などを観察する癖がついた。そのためか……。

「あ!次、移動だよね!」

私は、そう言って片付け、教科書類を持ち、香澄ちゃんと一緒に歩き始めた。

あれ?香澄ちゃんのいつもと歩くスピードが違う?それに、色々とどこかおかしい……。

私は歩く香澄ちゃんを見て、ふと思った。そう。常に観察しているので、観察力がすごいのである。

何かあったのかな……?でも、違ってたらやだな……。

そう思うと、心臓がバクバクと唸り、声が出ない。結局、気づかないフリをして次の授業場所へと向かった。
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