篠田くんの取扱説明書
*夢の中の女の子─仁side
『ねぇ』
───なんだ?
『大丈夫?』
───なにが?
『傷だらけだよ』
目の前にいる女の子が、俺の頰にハンカチを当てる。
でも、別にどこも痛くないんだけど。
ボンヤリとしか見えない、女の子の顔。
どうして、見えないんだ。
キミは……俺を助けてくれた…大切な子なのに。
『ねぇ』
───どうした?
『私、痛かった。怖かった。
なのに貴方は、そんな私の気持ちなんて知らないまま、幸せになろうとするんだね』
───知ってるよ。
だから、キミを幸せにしたくて一緒にいるんだろ?
なぁ、百華。
『……』
ボンヤリだった女の子の顔が赤く塗りつぶされていく。
そして、ハッと意識が覚醒した。
……また、あの夢か。