篠田くんの取扱説明書
*篠田くんと過去
私は当時のことを話し始めた。
「中学3年の、秋でした。
その日は美容院に行って、ボブにしてもらったんです」
私の髪は次の日には台無しになっちゃうから、
綺麗なうちに外を歩きたくて、美容院の帰りにいろいろ寄り道をした。
「寄り道をしていた途中で、
私と同じ、中学生くらいの男の子が
高校生のヤンキーに絡まれてるところを見かけました」
「……」
「その男の子は、なにかを大事そうに持っていました……あ!」
その時のことを振り返って、思い出した。
「その時、男の子が大事そうに持っていたのが、
このピアス…!」
ガラス製で、羽の形をしてて、淡い紫色で着色されている、ピアス。
少し不恰好な形をしてたから、覚えてる。
今先輩が持っているそれも、同じように不恰好な形をしてる。