篠田くんの取扱説明書
思い出したくないことだってあると思う。私も忘れたかったし。
だから、黙ってないと。
「桃奈ちゃん」
「…わっ!先輩!」
考え事をしていたら、いつのまにか先輩が戻ってきていて、
私の隣に腰をおろした。
……あれ?
「先輩、返したピアスどうしたんですか?」
先輩の耳には、さっき返したはずのピアスがついていなかった。
「…ん?あぁ、あれね。
壊した」
「……えぇっ!?」
せっかく返したのに!?
お守り代わりとか言っといて…!
罰あたっても知らないからね!!
「まぁ……悪いことしたとは思ってる」
「じゃあなんで壊したりするんですか…」
「ちょっと、イライラしちゃって」
そう言いながら自分の耳たぶを触って
「そうだ、壊したんだった」
なんて、悲しそうな顔をするのなら、
そんなことしなきゃよかったのに。