篠田くんの取扱説明書
最初から応援してくれてたこともあってか、
先輩は悲しい顔をしていた。
「うん…そっか。
でもそれなら、1つ気をつけてほしい」
「……はい?」
「周囲には気をつけな。
特に…百華のまわりを歩かないようにね」
え?と先輩を見ると、
先輩は立ち上がって、フェンスにもたれかかった。
「あの、先輩?
今のはどういう…」
「そのままの意味だよ。
……さ、桃奈ちゃん、
今日はここに長居しすぎだから、そろそろ教室に戻ったら?」
ずっとここにいたけど、どうやら先輩の邪魔になっていたようで、
すいません、と頭を下げて、屋上を出ようとした。
その直前に
「……もう、前兆はあった。
あとは、仁がどうするかだ」
カシャン、と先輩がフェンスを掴んで、小さく何かを呟いていた。
……怒りが滲んだ声に、何も言えなくて。
聞こえてないフリをして、屋上を出た。