篠田くんの取扱説明書
びしょ濡れで、シャツも汚れてしまっていて、教室に戻ることも出来ない。
どうしよう…。
早退しようにもカバンは教室だし…
とりあえず保健室とかに行こうか…。
涙を我慢しながら、スカートをはたいていると。
「…っ、桃奈ちゃん!」
「……先、輩…?」
走ってきたのか、先輩が息を切らして私の目の前に来て。
「桃奈ちゃん、大丈…」
「先輩……」
先輩の顔を見たら、なぜか我慢していた涙がボロボロ溢れて。
「……ったく、
あのクソボケが」
先輩は眉間にしわを寄せて何かを呟いた後、
よしよしと私の頭を撫でてくれた。
「これじゃ授業出れないね…。
……もう帰ろう。
カバン持ってきてあげるね」
先輩が私をベンチに座らせると、
またポン、と頭を撫で、走って校舎に入っていった。
そんな先輩の背中を見ながら、小さく、
「ありがとう」
と呟いた。