篠田くんの取扱説明書
*久我と本能と恋─仁side
昼休みに入ってすぐ。
「百華、ちょっといいか?」
百華を呼び出し、空き教室に連れ出した。
「昼休みに仁から声をかけてくるなんて珍しいね。
いつもは寝てるくせに」
クス、と上品に笑う百華を、俺はなんの感情もなく見ていた。
……前は、この顔が好きだった。
話すのも。抱きしめるのも。キスも。
好きだったはずなのに。
今は……嫌悪感が溢れて止まらない。
「百華」
「どうしたの?」
「さっき、怪我した。
絆創膏持ってないか?」
百華に、探るような視線を向ける。
百華はその視線に気付かず、えぇ?と声を出した。
「わたし絆創膏持ち歩いてない」
「………」
……やっぱり。