篠田くんの取扱説明書
教室に戻る途中で、
さっき階段で私を押した女の子と美月さんが前から歩いてきた。
「桃奈、下がって」
「……えっ」
篠田くんが私を庇うように前に立つ。
篠田くんが美月さんに鋭い視線を送ると、美月さんはビクッと肩を揺らして視線を逸らした。
篠田くんはそのまま美月さんの横を通り過ぎようとする。
美月さんが私の横を通り過ぎた時、
私は篠田くんの手を離して、足を止めた。
「……桃奈!」
篠田くんが心配そうにもう一度私の手を掴んで歩こうとする。
でも私は、足を動かさずに、美月さんを見つめた。
「美月さん」
「……!」
美月さんが私の方を見て、申し訳なさそうに眉を下げた。
「ごめ…んなさい、
もう、二度とあんなことしないから…」
よっぽど篠田くんにされたことが怖かったのか、美月さんは震える声でそう言った。