篠田くんの取扱説明書
ほっとしたのも束の間。
自分の手元に、ピアスがないことに気付く。
あ、
あの金髪高校生が持っていってる。
あぁ…せっかく飽きてくれてるのに、また声かけないといけないのか。
立ち上がって、高校生を追いかけて、後ろから肩を掴んだ。
「……ピアス、返して」
「あー、このだっせぇピアス?
これそんな大事?」
「それは、大雅くんにあげるものなんだ」
「立花にやるんだ?
じゃあ尚更返せねぇなぁ」
「……返せ」
「生意気なんだよ」
高校生が俺を睨み、また俺を殴った。
「ぐ…っ」
「返さねーよ、バーーカ」
ハハハと笑いながら、やり返す力もない俺を見下した。
……情けない。
大雅くんにあげるはずのピアス。
せっかく母さんの知り合いに頼んだのに…ごめん。