篠田くんの取扱説明書
*篠田くんの違う一面
午前の授業が終わって昼休みになると、篠田くんはすぐに教室を出ていった。
朝から篠田くんがいたからか、教室はいつもよりも緊張感に包まれていたけど、
篠田くんがいなくなったことで、クラスからそれがふっと抜けた気がした。
「篠田くんが朝からずっと授業出てるなんて、
珍しいこともあるんだねぇ」
隣でお弁当を広げる秋穂が感心したように言う。
たしかに、だいたい何かしら授業サボってるから、ずっといるのは珍しいかもしれない…。
まぁ、単位落とさないためだと思うけど…。
私もお弁当を取り出して、広げようとしたら。
「桃奈ちゃん」
廊下から私を呼ぶ声がして、
振り向くと、立花先輩が手招きしていた。
「桃奈ちゃん、お弁当持ってついて来て。
あ、お友達も」
立花先輩が秋穂にも手招きすると、秋穂は「はい…♡」と言って広げていたお弁当をすぐに戻して先輩のもとへ歩いていく。
秋穂……立花先輩にメロメロだな…。