篠田くんの取扱説明書
教室に向かおうとすると、
後ろから誰かの手が伸びてきて、私の頰を押してきた。
「おはよう、桃奈ちゃん」
後ろから高い声が聞こえる。
高いと言っても、裏声みたいなやつ。
ふわっと鼻を通った香りで、誰かわかった。
「立花先輩ですか?」
「せいかーい」
手を離してくれて、後ろを振り向くと、ニコニコと笑っている先輩が。
それにしても匂いでわかるなんて。
すごい、いい匂いするんだよね、先輩。
……っていうか先輩、
「よく私ってわかりましたね?」
「雰囲気と体型と立ち方でわかっちゃった」
今日の私は
髪を下ろしているのに。