偽装恋人などごめんです!
偽装恋人などごめんです!
「頼む! この通り、野乃!」
「しつこい! 佑さん、いい年してなんで自分で断れないの!」
まるで、子供を叱るように声を張りあげる私は、園田野乃、二十三歳。
対して、椅子に座っている私に両手を合わせ、ギュッと目をつぶり、正座をしてお願いモード全開の彼は、河東谷佑さん、三十一歳。
ここに八歳の年の差があるなんて信じられます?
今日は金曜。時刻は二十二時。そもそもひとり暮らしの女のアパートに来る時間じゃないんだよ。常識でしょ?
こんなにはっきり断っているのに、佑さんは諦めない。
「会社同士のつながりって面倒なんだよ。角立てるわけにいかないでしょう」
佑さんは、中小とはいえ製菓会社の社長令息。
今日のお願いの内容はこうだ。
父親からの“身内だけの親睦会”(=見合い)に呼ばれているが、自分はそのお相手とは結婚したくない。だから、“恋人”として、一緒に行ってほしいというものだ。
ちなみに私と佑さんは恋人ではない。敢えて言葉で表すならば幼馴染。といっても八歳もの差があれば、その呼び方が正しいかは疑問だけれど。
「佑さん。はっきり断らないからずっと見合い話を持ってこられるんでしょ? 結婚する気がないなら、そう言えばいいんだよ。もしくは、諦めて早いとこお嫁さんもらっちゃえばいいじゃない」
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