偽装恋人などごめんです!

「だが、年の差を考えるとやはり怖気づいてしまった。野乃にとって、俺はずっと幼馴染みの兄貴みたいなもんだろうし。まだ社会に出たばかりで、結婚なんて意識の範疇外だろうし。だが、俺はもう三十一歳で、両親からも結婚を迫られている。俺自身、野乃とだったら結婚したいと思ってる。そこで、偽装恋人として両親と会わせてしまおうと思いついた。両親はとりあえず相手がいればおとなしくなるだろうし、野乃だって昔から知ってる親父やおふくろに“恋人”して紹介されれば、のっぴきならなくなるかなって思って。……そうして、野乃が困っている間に、本気で落としにかかれば、俺のことを男として見てくれるようになるんじゃないかなんて、邪な考えを抱いてたんだ。まあ、なんていうか、周りから固めようっていう作戦だったわけだが」

だから、そういうところがダメって言ってるでしょうが。
まずは向き合う人の気持ちを考えなよ。いつの間にか周りを固められていて嬉しい女が何処に居るんだ。

だけど、さすがにそんな真相には笑うしかない。

「……ヘタレ」

「言うな」

「いや言いたくもなりますよ。そんな回りくどいことして。……本当に佑さんが私にして欲しいこと、はっきり言ってくれればいいじゃないですか」

「だって、お前絶対嫌がるだろ。俺は、お前と結婚したいんだよ!」

顔を見合わせたまま、動きが止まる私たち。
うわ、佑さん顔が真っ赤だ。可愛い。
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