偽装恋人などごめんです!
「……それ言う前に、言うことあるでしょう?」
「俺はロリコンじゃない。だけど、野乃のことは昔から好きだ。おにぎりを作ってくれた野乃が。そうやって歯に衣を着せずに突っかかってくる野乃が」
「褒めてなくない?」
「褒めてる。……いつも、俺の心に突き刺さるようなことを言うのは野乃だけだ」
どうしよう。ロリコン疑惑からマゾ疑惑浮上してきたけど。
だけど、だけど、嬉しくて顔がにやけちゃう私もいるよ。
ニマニマして見てたら、ついにたまりかねたのか佑さんがそっぽを向いた。
ああ、そんなテレ顔も可愛いじゃないか。
「あのね」
「なんだ」
「……私も佑さん好きですよ?」
ぱっと振り向く彼。まるで、この世にないものを見たときのような驚いた顔。
「え?」
「知らなかったんですか。私もずーっと好きでしたけど。私なんて子供過ぎて相手にならないだろうってあきらめてましたが、佑さんが案外子供で驚きました」
傷ついたような顔をして、ぷいと不貞腐れる。
うん。そういうとこだよ。
「けなしているのか」
「喜んでます。案外お似合いかもしれない、なんて、私もようやく思えました。……佑さん、大好きです!」
「野乃……」
次の瞬間、ギュッと抱きしめられる。スーツの香り、広くて逞しい胸。こんなに素敵で大人な佑さんは、話すと子供みたいで可愛い人。
「じゃあ、野乃。俺と……」
「でも、すぐに結婚とか重いです」
みなまで言われる前に言い返すと、彼は「……だよな」と頭を垂れた。
なにこれ、可愛い。可愛すぎる。
「……でも恋人にはなれます。さ、着替えて出かけましょう?」
「え?」
「おじさんとおばさんと食事するんですよね。私も久しぶりに会いたいです。その、……結婚相手とまではいかなくても。交際相手としてなら」
「……いいのか?」
「佑さんが私でいいなら? 八歳も年下の、世間知らずで生意気な小娘ですけど」
「野乃がいいって言ってるだろう」
もう一度ギュッと抱きしめて、佑さんはおでこにキスをくれた。
私の反応を確かめながら、目尻やほっぺに、次から次へとキスを落とす。